礎コラム【認知症の利用者様エピソード】

コラム

はじめまして。
居宅支援事業所管理者の名倉です。
この度、コラムの依頼が私のもとに来ました。

休日の夕方、洗濯物をたたみながら何を題材にしようか考えていたところ、
世界的人気のBTSの『Answer:Love Myself』という曲が耳に入ってきました。
実は私は、新参ARMYなのです!!昨年の12月頃、親子で沼落ちしました。
題名の通り、『自分自身を愛する』をテーマにした曲なのですが、
この歌を聴きながら、ある利用者様の家族のことを思い出しました。

去年の夏頃から担当した利用者様です。
80代男性、夫婦二人暮らし、アルツハイマー型認知症で失語がありました。
初回訪問の際に、奥様が、二人の馴れ初めを嬉しそうに話してくださり、
とても仲の良い夫婦だと感じました。
要介護1の認定で、要支援の時から利用していた
半日型のデイサービス週1回の通所を継続利用し、
新たに失語のリハビリを週1回実施し、経過を見ていました。
(何度か通所の増回を試みたのですが、本人の拒否が強く、失敗に終わりました)

昨年の12月頃から急に認知症症状が悪化し、攻撃的になってきました。
奥様一人での介護が難しくなり、認知症対応型のデイサービスを検討したり、
ショートステイを利用したりもしましたが、いずれも上手くいきませんでした。
デイサービスは、送り出すまでの準備にてこずるので、奥様の負担が増えることから断念、
ショートステイは、本人が部屋を間違え他の利用者さんとトラブルになったり、
施設職員に怒鳴ったりするので、施設側から4日以上は預かれないと言われました。
そのため、遠方に住む息子様や娘様が交代で介護しに来てくださいました。

そんな中、新型コロナウイルスオミクロン株が流行。息子様や娘様も感染を心配して、
来るのが難しい状況になってきました。認知症は悪化し、大きな声を出しながら、
隣のお宅の敷地に侵入するようになってしましました。
一日中目が離せない状況に、穏やかな奥様が利用者様へ
手を上げそうになったこともあると娘様より報告を受けました。
家族がもう限界に近付いているのが明らかでした。そして、このままでは、
近隣の方に攻撃的な行動をとることが予想されました。
もともと認知症の治療で専門病院にかかっていたこともあり、
病院の相談員さんに連絡、病院で治療することが望ましいでしょう、となりました。
娘様が病院で、治療のことなどの説明を聞き、納得の上入院することになりました。
入院後、奥様から電話がありました。

「お礼を言おうと思い電話をしたのですが、自分のふがいなさを感じて、
情けなくて涙が出てきました」と泣きながら話を始めました。

もっと自分が頑張れば、夫はよくなったかもしれない、
夫を見捨ててしまったのではないいか、そんな感情がどっと押し寄せてきてしまったようです。

私は、「もっと自分を大事にしていいのですよ」と伝えました。
介護を頑張った方ほど、施設入所を決めた際などに、自分自身を責める傾向にあるように感じます。
もっとこうすればよかった、そういう想いはやはり生じてしまうと思います。
でも、介護者の方が、利用者様のことを大切に想うのと同じように、
利用者様自身も介護者の方を大切に想っているはずです。

悩んでいる顔より、楽しそうに過ごしている表情を見たいはずなのです。
ですから、介護者の方も、自分のことをもっと考えてよいのです。
『Love Myself』介護で悩んでいる方に伝えたい言葉の一つです。

このご家族のその後ですが、現在も入院中です。
娘様から、一度連絡がきて、「病院へ電話をした際に、相談員さんから、がんばって治療していますよ
、と言われました。その言葉を励みに、私たちの生活も少しずつ元の生活に戻りつつあります。
年末年始の厳しい中、暖かい対応をありがとうございました。」と言われました。
みんなが前向きに進み始めたことをうれしく感じました。
再び担当出来る日を願いながら、私は今日も息子とBTSのButterを踊るのでした。
(これが私のLove Myself!幸せの時間です)

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